2010年4月4日日曜日

なぜ今久永文書か?〜ソルトレークシティオリンピック後にISUの内部で何が起きたのか?

フルテキスト〜ISU(国際スケート連盟)へのJSF(日本スケート連盟)の抗議文 by 久永勝一郎氏

バンクーバーオリンピックが終わり、世界選手権が終わり、フィギュアの試合での採点の変さ????が話題になっています。なんでこんなことになってしまったのか採点問題について調べていたら、この久永氏の7年前に出された英文公式抗議文にぶつかりました。英文原文はWiki「チンクアンタ会長」の記事の参考資料の一つに埋め込まれていました。後でこの抗議文は今でも要約されたものがJSF公式サイト(以下参照)に掲載されていると友人に教えてもらいました。
http://skatingjapan.or.jp/whatsnew/whatsnew.php?p=7
03.03.13  JSF decided to file the "Letter of Protest" to ISU
03.03.25  日本スケート連盟からISUへの抗議文和訳1
03.03.25  日本スケート連盟からISUへの抗議文和訳2


要約ではなく、フルテキストが貴重なのは次のことがよくわかるからです。事件の現場にいた人にしか書けない生々しい内容で、久永氏はISU副会長という立場にあったため、ISU組織とその規則に精通していたと思われ、細部にわたり時系列で何が実際に起こったかを、ISUのごまかしたこと、問題点を一つひとつ告発する形で証拠を揃えて描いています。一級のドキュメンタリー資料です。特に、次の点:

1−1)ソルトレークシティ(SLC)スキャンダル後に開催された2002年ISU総会で実際に何が決められたのか?
1−2)その時点で発表されたISU公式プレスリリーととその後にISUが通知した内容はなぜ異なってしまったのか?久永氏が指摘する通り、ISUはごまかしたのか?
2−1)カナダメンバーMr. David Doreが提案したコンピュータ使用の新採点システムは、久永氏が指摘する通り、秘密裏に2002年以前から計画進行されていたものなのか?
2−2)久永氏は、2002年の総会で副会長選に負け、以後Mr.Doreが副会長(2002/6月〜現在に至る)になります。しかし、久永氏が現職副会長時代(1998-2002/6月)に、彼はなぜ「新採点システムが計画、進行されていた」ことをまったく知らされていなかったのか?
2−2)カナダを中心とする関係者は、SLCスキャンダルを逆手に取って、ごたごたに乗じて新採点システムを導入させてしまったのか?

採点システムがコンピュータ化されて8年が経過、2回のオリンピックが終わり、フィギュアファンの間では、ISUの採点システムへの不信が益々増大しました。JSFは今年のISU総会で女子シングルのジャンプに対する得点に関してルール改正を提案すると報道されています。ISU Council(理事会)は会長、副会長2名と残り8名のメンバー、計11人で構成され、絶大な決定権を握っています。日本は理事会のメンバーではありません。日本の提案がどのように処理されるのか興味深いです。

ISU(国際スケート連盟)に関するお勉強〜ISU Council(理事会)とは?


ISUは若返りが必要(ソニア・ビアンケッティ 2008/10)(記事 ...

2008年11月5日 ... みみのフィギュアスケートファン figure skating fan MIMI's blogの記事、ISUは 若返りが必要(ソニア・ビアンケッティ 2008/10)(記事)です。
ameblo.jp/mimiskate/entry-10160612426.html - キャッシュ - 類似ページ


そうしたことを含め、久永文書に書かれている内容は、今も尾を引いていると思われ、ISUという組織をながめるのに非常に役に立つと思われます。

以下は、久永文書の英文にであった時にフィギュア仲間の友人に送った2010.3.30.付けメールです:




ISUを中心とするフィギュア界システム不全の問題は根が深いようです。それぞれの国がそれぞれの事情を抱えています。

今回はチンクアンタISU体制で何が起きたか、日本スケート連盟はその中でどんな立場だったかについて。

新採点システムに限っては、やはり、ソルトレークスキャンダルまで遡ると思いました。

1。1994年、スピードスケート出身のチンクアンタ氏がISUの会長になった。フィギュア出身ではないということでフィギュア関係者から反発が強かったところに2002年のSLCスキャンダル発生。直後にこの問題にどう対処するのかと聞かれ、「私はフィギュアのことはよくわからないから」との返事が彼への不信を爆発させ現在に至るまで尾を引いているようです。

”However, because of his speed skating background, Cinquanta has been the subject of a considerable amount of criticism from the figure skating community, particularly in Canada and the United States. During the 2002 Olympic Winter Games figure skating scandal, he was criticized for his evasiveness and his admission that he didn't "know figure skating so well".[1] In spite of his professed lack of knowledge about the sport, he proposed a new scoring system for figure skating[2] whose major feature is secrecy which would prevent anyone from ever knowing how an individual judge had marked the competition. ”(出典、以下Wikiより)

Ottavio Cinquanta (born August 15, 1938, in Rome) is President of the International Skating Union and a member of the International Olympic Committee. He has held the ISU position since 1994 and the IOC position since 1996. ...
en.wikipedia.org/wiki/Ottavio_Cinquanta - キャッシュ - 類似ページ

2。興味深いのは、日本スケート連盟元会長の久永勝一郎氏がこの問題に不思議な絡み方をしていたのです。彼は2006年のトリノ五輪後、日本スケ連関係不正経理事件で逮捕され表舞台から完全に姿を消したのですが、日本人初のISU副会長に1998年(長野五輪直後)なり2002年にカナダスケ連会長でチンクアンタ支持者のDavid Doreに負けて副会長の座を降りています。ソルトレークシティスキャンダル発覚後久永氏は徹底的に膿を出すようにとISU総会で発言しています。
久永勝一郎元会長(元フィギュアスケート選手、元国際スケート連盟副会長)の任期中に、連盟の国際事業委員会において国際大会の運営などについてずさんな予算執行により大幅な赤字が出ており、また松本充雄専務理事(元スピードスケート選手)・城田憲子 ...所在地 - 役員 - 沿革 - 主催大会
ja.wikipedia.org/wiki/日本スケート連盟 - キャッシュ - 類似ページ


''What happened in the pairs event in Salt Lake City has destroyed and canceled in one minute all the effort and the work during the past 40 years to give credibility to judging and the sport,'' said Katsuichiro Hisanaga, the I.S.U.'s figure skating vice president.
''It is my opinion that the only way the I.S.U. can regain a certain credibility is to show the entire world our firm will to really clean house and to establish a clear new judging system.''
http://www.nytimes.com/2002/06/05/sports/figure-skating-australia-and-us-set-to-offer-scoring-plans.html?pagewanted=1
3。チンクアンタは結局事態究明に努めた関係者を罰し、あいまいな決着を付けたようです。ISUの各国メンバーたちの中のフェアな採点を求める声は押さえつけられてしまった。久永氏はチンクアンタと対立失脚、チンクアンタ支持のカナダ人David Doreが副会長になった。
Katsuichiro Hisanaga of Japan, who was the ISU vice president for Figure Skating , was not re-elected either. After the scandal blew up, Hisanaga, as the vice president, had expressed the opinion that the ISU should take immediate action ...
www.iceskatingintnl.com/archive/.../Cracked%20Ice%20Exerp.htm - キャッシュ


4。久永氏が副会長選で負けた2002年ISU総会で、ISUは新採点システムをプロジェクト(計画案)として提出するのですが、この時既にジャッジの匿名性が問題だとされています。またフィギュア関係者からはフィギュアの専門家でない人たちが考えたものとの批判も強かった。米国と豪州はそれぞれ匿名性を排した独自の別案まで提出しています。当事米国や豪州は、ISUとは別の新たな国際組織を作る動きをしていたようです。しかし、すぐにそれもたち消えます。その後当初単なるプロジェクト案に過ぎないとされていたものが、ISUメンバーによる正式な手続きを経ないで、なし崩し的にルール(規則)化されていってしまいます。この初期の過程でも久永氏は正式に抗議文書をチンクアンタ宛に送っており、日本スケ連はその英文文書を一時Webで掲載していたとのこと。今でも彼のこの文書がネット上に流れていて参考にされていることが今回分りました。

''What happened in the pairs event in Salt Lake City has destroyed and canceled in one minute all the effort and the work during the past 40 years to give credibility to judging and the sport,'' said Katsuichiro Hisanaga, the I.S.U.'s ...
www.nytimes.com/.../figure-skating-australia-and-us-set-to-offer-scoring- plans.html?...

”Readers who have not seen the letter sent to the ISU president by Katsuichiro Hisanaga, President of the Japan Skating Federation and former ISU vice president for figure skating, can find a copy of it at www.frogsonice.com/skateweb/articles/jsf-protest-letter.shtml   It is a remarkable document that clearly lays out the many ISU skating regulations that are being ignored and perverted by ISU management.”

http://www.iceskatingintnl.com/archive/results_worlds/worlds03.htm


4-1。新採点システム採用後の2003世戦でチンクアンタにブーイング。

”The implementation of secret judging at the 2003 World Figure Skating Championships in Washington, D.C., was controversial enough to result in a fan protest at that event [3], with Cinquanta personally being jeered by the audience whenever he was introduced.[4][5]”
http://en.wikipedia.org/wiki/Ottavio_Cinquanta

5。ISU内での日本の立場は、2002年以降久永氏ISU副会長落選で弱まった。また日本スケート連盟内部でも久永氏独裁に対する不満がつのっていたこと、2006年の不正経理問発覚で会長を辞任、後任に橋本聖子氏がなり、久永派は一掃され、新体制となった。橋本氏はスピードスケート出身でフィギュア出身でないこと、日本スケ連内部もごたごた修復に追われことを考えると、日本のフィギュア関係者はISUでの発言強化どころではなかったと思われます。

6。新採点システムは、ISUメンバーの正式承認を得ないままの見切り発車し、禍根を残したまま使われ続け、途中更に恣意生が強められ、今に至っているようです。粛々とISUの言いつけに従ってお仕事をしなければならないジャッジたちは大変だとは想像できます。但し、問題はフィギュア界のシステム不全であり、このシステム不全がどの国の選手にとってもフェアなもの公明正大なものにならない限り、フィギュア関係者やジャッジへの批判は今後も続くと思います。

7。ネットの偉力。ネットに流れる画像、ファンのサイト、過去情報の容易な検索、閲覧により上記の流れがある程度見て取れました。大手メディアやISU、各国連盟関係者たちが都合の良い情報だけを流しても、ファンたちの間で「これって変???」の情報交換の場がネット上で自然発生し、情報収集、分析、発信が容易にできます。この一般のファンの見る目を無視した試合運営は今後は許されなくなるものと感じます。

あくまでもネット上で集めた情報でまとめたものです。それを含んでご参考にして頂ければ幸いです。

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